弁護士が退廷命令を下され、それに抵抗したとして制裁裁判が行われた。過料を命じられた(特別抗告中)ということだけど、色々と考えさせられる事件だなぁ、と思っている。(1)なぜ、録音が認められないのか。
傍聴人に対しては手荷物検査がある一方で、弁護人には適用されていない。だから、その気になれば隠し撮りすることは可能なんだよね。でも、この弁護士は堂々と公判で、録音許可請求をした。それに対して、裁判官は理由を示すことなく、認めません、とだけ述べ、弁護人からなぜなのか聞かれても、法律上、必要のないことは答えない。の一点張り。
これらのやり取りの中でも、弁護士の発言は残っているのに、裁判官の発言の一部が残っていなかったりする。安倍内閣のときにさんざん繰り広げられた、国会答弁の無断修正(改竄)みたいなことが堂々と行われているのに驚いた。刑事訴訟法規則47条2項の内容だと思うけど、
≪第四十七条≫公判廷における証人、鑑定人、通訳人又は翻訳人の尋問及び供述、被告人に対する質問及び供述並びに訴訟関係人の申立又は陳述については、第四十条の規定を準用する。
2 検察官、被告人又は弁護人は、裁判長の許可を受けて、前項の規定による処置をとることができる。
この、裁判長の許可を受けようとした、ということ。弁護人の行っていることは、至極まともなことです。
ただ、許可の基準が明示されていなく、今回のように「認めません。」「理由は示しません」で押し通せる問題なのか。勝手に記録を改ざんする裁判所だもの、認めることで裁判所に不都合が生じるの?って勘ぐってしまうよね。
事件そのものは、通称ストーカー規制法に関する話。過去に国選弁護で同じようなことを試み、録音の不許可、退廷を命じられたこともあるということで、私選弁護になっている。ただ、背景を考えると、以下のようなことはありそう&ありえるかなぁ?というところ。
・この被告人は女性である
・この被告人は逮捕・勾留されていた
・この弁護士は最初、当番弁護で回ってきて被告人(当時:被疑者)と接見した
・解任されないために私選弁護を受任したので、弁護費用はボランティアに近い
弁護人が開廷直後に拘束され、制裁裁判のために待機させられている間、この裁判官は、必要的弁護事件でないから、審理を続けるといったという話。
ストーカー規制法は最長2年の懲役だから、3年を超える法定刑ではないから、弁護人がいなくても進行する。まさか、弁護士が量刑とか必要的弁護事件とかを理解していないとか、想像もできないし。(実際は、知らない弁護士のほうが多いんだけどね)
そうはいっても、私選弁護人がいるのに、拘束している間に、職権で国選弁護人をつけることもせず、審理を続けることを示唆した裁判官も、相当おかしいとしか思えないかな。
で、この話って、弁護人に録音されたら誰が不利益をこうむるの?って話なんですよ。
実際問題として、刑事裁判だと、検察官の主張にドラマみたく「異議あり!」とかやらないといけないわけで。一方で、裁判の進行を刻々と記録する必要もある。だから、記録役の弁護人と、質問役の弁護人、最低2人は必要なわけで、録音が許されるなら、被告人にとって、経済的には極めて助かるんですよ。でも、実際には、そうはなっていないわけで。
なんでだろうね?国選弁護人をつけるため、必要以上に弁護士に対してお金を払うため、国のほうが考えたシステムなのかもしれないし。刑訴法が制定されたころならともかく、今の社会情勢で、録音は許さないという合理的な理由が見出せません。裁判所側で録音を義務付けて、弁護人あるいは被告人の求めに応じ、適切に供用する、というのが無難な落としどころじゃないかなと思うんですが、なんでそうはならないんだろう?よほど、裁判所にとって不都合なのかな??あとで検証できないほうが、よほど不利益だと思うのですが。
念のため触れておくと、今でも裁判所は録音をしていて、書記官に尋ねればある程度は教えてもらえます。でも、その内容は開示されないし、尋問調書に誤りがあったとしても、指摘したところで修正されるかどうかはわからない。なんでそんなに閉鎖的なの?と思うのですが。
ってか、この刑事裁判と、制裁裁判の裁判官が同じなのは絶対にあかんやろ、と思うのですが。別の裁判官、いくらでもいるだろうに、わざわざ公正さを損ねる人選をして。意味不明。検察庁でも、よほど僻地の支部でもなければ、捜査・取調を行う検察官と、公判担当の検察官は別人が担当するぐらいなのに。